「Cute Aggression」姫野恋音誕生日記念shortstory
6月30日。ついに私の2年目のアニバーサリーライブが行われることになった。
元々推しを追っかけて来た私が、ここまで来るなんて想像つかなかった。
私、姫野恋音は芸能界なんて縁遠い普通の高校生をしていた。普通に学校に通って、放課後は友達と遊んで、家に帰る。楽しい普通の日々。
でも、そんな「普通」だらけの毎日に「普通じゃない」ことがある日飛び込んできた。
きっかけは、友達からのLINE。おすすめの動画投稿者が居るから「布教」したいんだと、URLが送られてきた。いわゆる「ボーカロイドの歌の歌ってみた」動画で、男性が歌っている物だった。
当時の私は、サブカル系は否定的ではなかったし、流行してる物はなんとなく知っている。その程度だったけれど、それを見た瞬間に、一気に引き込まれた。
切なく甘く低い声。しっとり歌い上げられたその歌に、私はいつしか夢中になり、1時間ずっと聞いていた。気がついたら、その人のSNSをすべてフォローし、開催されるイベントまでチェックし始めていた。私にとっての「推し」が出来た瞬間だった。
ライブハウスでのイベントで生歌を聴いて、いつしか「あの人に立ち並びたい」その思いが増していった。「推し」にふさわしいファンでありたい。そう思ってから行動が早かった。
今時便利な物で、スマートフォン1つで録音が出来た。MIXは分からなかったから、SNSで手伝ってくれる人を探した。歌うことは好きだったけど、特別上手いとは自分で思っていなかったから、動画サイトで練習方法を調べて毎日練習した。その甲斐あってか、動画は少しずつ伸びる様になり、小規模なライブハウスで行われるライブにお誘いの声がかかりはじめた。録音とライブは全然違って、それをどっちもこなす「推し」は本当にすごい、尊敬しかない、そう思う日々だった。
ある日、「Cute Aggression」の運営元の事務所から「アイドルにならないか」と声がかかった。
「…わたしが…?」最初は混乱した。推しを追ってその真似事をしているだけの私が、アイドル、つまり「推される側」になるなんて想像つかなかった。いいのかな、ぽっとでの私が、アイドルになっても。
そんな時でも、背中を押してくれるのは、「推し」の存在だった。
「推し」はいろんな事に挑戦していた。歌ってみただけじゃなくて、オリジナル曲を作ったり、いろんなライブに出たり、配信を頑張ったり…。そんな「推し」のSNS投稿で目にとまることがあった。「この界隈での先駆者の人たちみたいに、もっと羽ばたいていきたい」
「推しにふさわしいファン」になるのなら私も挑戦するべきなのかも。そう思い始めた。
「推される側」になった今は、推し活はこっそりすることにしている。でも、私の心の支えは変わらずに「推し」だ。
「推す」ことの楽しさは、私が人一倍分かっている。だからこそ、「推される」大変さ、責任も若手居るつもり。それも含めて全部楽しんでいきたい。
いつか「推し」と会えたら良いな。そんな淡い期待は秘めたまま。
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