「Cute Aggression」南雲星香誕生日記念shortstory
春、日中は暖かな空気に包まれる日々が続くが、まだ日が暮れると肌寒い。
そんなとある4月の夜、私がメインのライブを敢行させてもらえることになった。
「みなさん、改めましてこんばんは。南雲星香です。本日はご来場頂き誠に有り難うございます。」
静かな、暖かな拍手が沸き起こる中、私は1礼して話し始めた。
「【Cute Aggression】に途中から加入し、今までのメンバーとは異質な感じで・・・。それでも仲間に迎え入れてくれた先輩方、ファンの皆様、本当に有り難うございます。」
「私は少し前までは、一般的な女子高生、いわゆる”箱入り娘”でした。」
つらつらと話し始めた。昔話というにはそう遠くないお話―。
私の父親も母親も、医者としてキャリアを積み上げている。そのこと自体は尊敬しているし、だからこそ何不自由なく過ごせてこれた。・・・自分の思想以外は。
物心ついたときからそばには勉強があった。病院を継ぐことが大前提なのだろうなということは分かってしまっていた。小学生まで、それを嫌と思ってこなかった。
だけど、中学生になり思春期が到来してくると、考えが変わってきた。深夜ラジオ、ネットから流れてくるダークな音楽、ロックな音楽、けだるい言葉、アイドルのきらめき。私はそれらに惹かれていた。遅い時間まで勉強するという隠れ蓑を使いながら、その文化にどっぷりとはまった。
でも、時は待ってくれない。高校生になり、進路の話が出てきた。案の定親は継がせる気満々で、志望校は国公立・私立問わず医学部だった。自分をだましだまし勉強した。でもそれじゃ届かない世界なんだってことは分かってる。私は大学全部不合格だった。
予備校に申し込まれそうになったとき、私は振りきった。「私が、本当に今したいことはなんなのか」
そこからの行動はすぐだった。今まで使い道がなく貯めていたお小遣い・お年玉を使うときがここだと思った。
「家出する。上京する。」それだけメッセージを残して、私は「Cute Aggression」の所属する事務所に向かった。
「そこからの日々はあっという間で。見ず知らずの私に手をさしのべてくれた事務所と【Cute Aggression】には感謝しかないです。だから、本日は感謝の気持ちをこめて歌います。
聞いてください『ノマド』」
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